「涙、おさまった?」 若葉の言葉にこくん、と頷いた。 「江本さんね、あの花束を亡くなった娘さんに渡してから、この街を離れるつもりだったんだって。娘さん、桜好きだったんだってさ。」 「へー、そうなんだね。」 少し間をあけて、若葉が話す。 「ごめんな、亡くなった娘さんの代わりなんかさせて。」 「ううん、大丈夫。」 「でも、江本さん、最後にすっきりした顔してたよな。」 「うん、幸せになってほしいなって思った。」 「そうだな。」 胸のざわめきはなくなり、今は幸せな気持ちでいた。