いつもあたしを見て、ごめんねと謝る声。
腫らした目元。
しわが増えていても分かる、この人があたしの母親であることを…。
「桜ちゃんっていうのね。あたしの娘にほんとにそっくりだわ!最初は本人だと疑ったほどにね。あたしの娘はもういないのにね。」
綾子は涙を浮かべていた。
「桜ちゃん、こちら江本さん。この花束を待っていたお客さんだよ。」
「江本さん…。」
苗字が変わっていたことに驚いた。
似ているだけで、別人なのか?と思ったが、
「私、旧姓笹本っていうんです。再婚しまして…。あぁ、あなたを見ていると、娘を思い出すわ…。」
やっぱり、あたしの母親に間違いなかった。
ちょっとごめんなさいね、と江本さんは言い、あたしをぎゅっと抱きしめた。
急のことで驚いた。
江本さんは、あたしの温もりを確かめるようにそっと顔を埋めた。
「亡くなった娘をこうやって抱きしめること、できなかったから。桜ちゃん、代わりにあなたを娘のように抱きしめさせてちょうだい。」
あたしはどうしたらいいのか分からなかった。
体が硬直して動かない。
助けを求めて、若葉を見つめた。
若葉は、そっとあたしの頭に手を置き、耳打ちしてくれた。
あたしはその言葉を聞いたとたん、体の硬直が突然切れた。

