「桜ちゃん、こっちこっち!」
遠くで、手を振る若葉を捉え、早足になる。
「桜?」
ドクリ…
何だろうか、この胸のざわつき。
若葉のもとに行きたいのに、行きたくないような感じ。
「桜ちゃん、どうしたんだよ?早く、おいで!お客さんがお待ちだよ。」
「は、はい。今行きます!」
若葉の隣に、この花束を待っている女性らしき人がいた。
その人に近づけば近づくほど、胸のざわめきは激しくなった。
深呼吸をし、気持ちを落ち着けながら若葉のもとへと歩いた。
「桜ちゃん、お疲れさまでした。」
やっとの思いで若葉の元へとたどり着いた。
でも、早くこの場所から立ち去らなければならない、そんな気がした。
「あなた、さくらっていうの?」
若葉と重なっていた影が揺らぎ、あたしの前に顔を出した。
あたしは息が詰まった。
うまく呼吸ができているのかわからない状態であった。
その女性は……
あたしの
母親であった。

