あたしは昔から体が弱かった。
そのため走ることも、泳ぐことも、長時間外に出ることもできない状態であった。


あたしの名前は、笹本桜。高校入学したばかりの15歳。


今、まさにあたしの寿命が尽きようとしていた。
自分でもおかしいほど冷静に感じる。
暗く、寂しい、大きな塊のようなものに足を掴まれているのだと…。


母の声が耳元に聞こえる。
涙でぐしゃぐしゃになった母の姿からは、いつもの気の強い姿を感じさせないほどであった。


おかあさん、ちゃんと聞こえているから…。
そんなに泣かないでよ…。


母に握られていた手が離され、処置室へと運ばれる。


母の温もりを失った左手は、暗闇が侵食するように徐々に冷えていった。