「そうだ、桜ちゃん。何かやり残したこととかないの?」
ある日のこと、紬が突然口にした。
「やり残したことですか?」
「そう、タイムスリップしたってことは何か意味があるはずと思うのよね。何か、してみたいこととか、やりたいこと、見たいこととか?」
「そうですね…。やり残したこと、ないんですよね。後悔しないように、今を生きたいって思ってましたから。」
「そうなのね。それって何だか、寂しいわね。」
寂しい?そんなこと全く感じた事なかった。
「わたしはね、いっぱいあるわよ。この花屋を大きくして、この街の人みんなを笑顔にさせることでしょ、あとはおいしいものをいっぱい食べる。あと、若葉の成長を見守っていくとかね。」
「桜ちゃん、後悔しないように生きていくことは素敵なことだと思うわ。でも、それじゃあね、次に繋がらないの。できないことは最初からやらないってことで、なんだか寂しいわよ。」
紬の言葉に胸が熱くなる。
あたしは小さい頃から自分が長くないことを知り、今できることをやろうと考えていた。
しかし、それはあたしができる範囲でこと。
できないことは選択肢から外していた。
「桜ちゃんが本当にやりたいこと、したいこと、よく考えて。それがたとえできない事であっても、それを達成しようとする姿こそが恰好いいものよ。」
「はい。」

