10年後の世界に来て、何がなんだか分からない状態であるのは変わらない。
しかし、
この人たちは、あたしを理解してくれるのだと思うとうれしかった。
「若葉は?何か反論はある?」
紬が若葉に問いかける。
「いいや、俺も姉ちゃんと同じさ。今回は嘘をついてない。真の言葉だよ。お前もよくわかんない状況だったのに、いろんなこと聞いてごめんな。」
若葉が急に謝るもんだから、逆に焦った。
「こちらこそ、どこの誰だか分からないあたしを、介抱してくださりありがとう。」
「あら、誰だか分からないわけでもないわよ。」
あたしは、紬の言葉に耳を疑った。
「だって、あなたは桜という名の女の子で、ちゃんとありがとうが言えて、いま生きていて、涙が流せる。そうでしょ?ほら、こんな短時間でも分かるのよ。あなたがどんな子か。」
あたしは笑った。
泣いた。
笑いながら泣いた。
泣きながら泣いた。
2人は困った顔をしていた。
でも、2人も優しく頭を撫でてくれた。
ありがとう
そう、言いたくなった。

