「あら、よかった。あなた、貧血で倒れたの。分かる?」



若葉の姉が近づき、あたしの左手を握る。



温かい…。



自然と涙がでた。
最後に人の体温を感じたのは、目を腫らした母が最後であった。
とても、長い間人の体温を感じていなかったのだろうか、その心地よさが懐かしいように感じて……。



「あらら、どうしたの?何かつらいことでもあったの?」



あたしは必死に顔を振った。
「違くて、なんかわかんないけど、うれしくて。人の手ってこんなに温かいんだって思って…。」



若菜の姉は、あたしをそっと抱きしめた。



「そう、人は温かい生き物なのよ。感じる?心臓、動いてるでしょ?」
あたしは、黙って頷いた。



「あなたの心臓も動いてるわよ。ほら、トクン、トクンって。」
生きていることがうれしくて、あふれる涙を拭いもせずに、抱きしめる腕にすがった。




「あなたにどんなことがあったか分からないけど、これでわかったでしょ?これが、夢じゃなく、現実だってこと。」




あたしは頷きながら「分かった。」と答えた。