突然のことで驚き、桜木から手を離し、声のする方へと振り向いた。
見知らぬ青年が1人立っていた。
「だ、だれ?」
恐る恐る声に出してみた。
ここがどこであるか、はっきりしないうえに、知らない青年と出会ったことで、あたしの思考はプツンと切れた音がした。
「あぁ、ごめんね。突然、声かけたから驚いたよね。」
青年は慌てた様子で、頭を掻きながら続けた。
「俺、この街にきて花屋やってる大内若葉っていうんだ。今は、ちょうど配達の途中ってか…。」
青年、若葉は申し訳なさそうに眉をへの字に曲げ、苦笑いを浮かべていた。
配達の途中っていうのは間違っておらず、青年の右手には見たことのある黄色い花の植木鉢を持っていた。
「俺、ここの街にきて10年経つけど、君みたいな子初めて見るし…。」
「君、名前は?」

