え、うそ…
頭上には、桃色の花びらをまとった大きな桜の木があった。
あたしの記憶が正しければ、こんなところには桜の木は一本もなかったはず。
一歩、一歩、桜の木に近づく。
そう、あたしが桜の苗木を植えるまでは、こんなところには桜なんかなかった。
それじゃあ、この桜は?
なぜ、こんなところで咲いている?
桜木に手を伸ばす。
なぜか、胸がいっぱいになっている。
この気持ちはどこから来たんだろうか?
桜木の幹にそっと、触れた。
幹の感触が手に感じる。
桜木の生命の鼓動というべきか、何かが伝わってくるようであった。
桜木もざわざわと揺らめき、嬉しそうに感じた。
「桜、なんか嬉しそうに揺れてるね。」

