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グラウンドのところどころに、緑色の雑草がちょこんと生えている。
あたしはそれを一束つまみ、ゆっくりと引っ張った。
――すぽん!
砂ぼこりを上げつつ、草はもちろん、
地面に隠れていた根っこも一緒に引き上げることができた。
「よっしゃ! 根っこまで綺麗に抜けたー!」
「オブチさんよくできましたねー。あーだりぃ、クソ地味な作業だよな」
数日後にせまった体育祭に向けて、今日の委員会活動は、グラウンドの雑草抜き。
だらだらとやる気がなさそうなあたしたち環境委員会。
それに対し、校舎近くでは、体育委員会の皆様が、
楽しそうにテントを組み立てたり、得点ボードに飾りつけをしたりしている。
ちなみに委員長は今日風邪で休んでいるため、
副委員長のあたしが、特大ゴミ袋を乗せた台車を押し、
草回収と指示出しをするべく、そこら中にちらばっているメンバーのもとを渡り歩かなくてはいけなかった。
「あ、お前1人だと頼りねーだろうし。俺も行くわ」
なぜか吉野先輩もそれについてきてくれて、
抜かれた雑草で重くなっていく台車をあたしの代わりに押してくれた。
うーん。
とても紳士的で、ありがたいことなのだが。
委員会メンバー(特に女子)から、
「吉野先輩、手伝ってあげてるんですか? 優しいですね~!」という声や、
「うわ、あの副委員長、吉野クンに接近できてうらやましぃ~」という声が聞こえてくる。
しまいには、「あの副委員長まじブス。調子乗ってるんじゃねーの?」というヒソヒソ声まで耳に入ってきてしまう。
(こういうのは女のあたしにしか聞こえてこないものだ)
なんか色々とめんどくせぇ。

