――あたしも、楽しかったです。
なぜ、その一言が伝えられないんだろう。
どうせ汚物でモテなくて天邪鬼なあたしは、そういうこと言うキャラじゃないから?
それとも、先輩にキャーキャー言っている女子たちと同類に思われたくないから?
ほんと、クソみたいなプライド持ちだよな、あたしは。
でも先輩は、
『俺は今日楽しかったし』
ってさらりと言ってくれた。
たぶんイケメンとしてのサービス発言じゃなくて、本心なんだと思う。
「……先輩、今日の夜は1人反省会しなくていいですからね」
あたしはエスカレーターに片足を踏み入れながら、
少しずつ下っていく先輩の後姿に話しかけた。
「ん?」
「カレーは食べきれないし、ダーツもマイダーツ持ちの割にはそんな上手くないですし、確かに見た目の割にはダサいですけど……でも、その、あの、
あ、あたしも、たた楽しかっ……」
「あー!? 吉野くぅ~ん、はっけぇ~んー!」
せっかく頑張って伝えようとしたのに、
急に1階から聞こえてきた、女子たちのキャピキャピ声に邪魔をされた。
エスカレーターの先をチラ見すると、1階フロアにいたのは……。
――げ。やばい!
マ○オカートのバトルモードの風船のごとく、よく先輩にまとわりついてる、あのゆるふわ女とケバ女さんだ!

