「そろそろ、帰るかー」
「は、はいっ」
胸がほんの少しドキドキ言っている。
楽しかった、って言ってもらえただけで、
あたしが女の子っぽくないから、とか、
汚物ローファーぶつけたから、とか、
そういう理由づけなしに、
『先輩と一緒にいるあたし』として自分に価値を与えられたような気がした。
「……別にヒマな時だったら、また相手してやってもいいですよ?」
うわぁ、何このツンデレもどきな言葉は。
何で、あたしは可愛くない言い方しかできないんだろう。
「お、そしたら次はボーリングか? 俺結構自信あるけど」
暗い店内にて、先輩はハイブリッドLED照明なみにまぶしい笑顔をあたしに見せてくれた。
そして、あたしの頭にぽんっと手を置いた後、下りのエスカレーターへと向かっていった。
どきっ!
だから、頭ポンポンはずるいよ!
あたしは下を向き真っ赤であろう顔をかくしながら、先輩の後ろに続いた。

