「……ちっ、どうせ世の中そんなもんですよ」
先輩にもらったジュース片手にやさぐれるあたし。
おそらく、必死で練習を続けている先輩に、今の愚痴は聞こえていないはず。
「あ、何か言った? でも上手い女の子いると、おおっ!? って思うし、時には真剣勝負したい時だってあるよ」
「そうなんすか」
「まー、少なくとも俺は今日楽しかったし」
「…………」
あ……これは結構嬉しいかも。
いつの間にか、さっきのバカップルはいなくなっていて、
左右の台にはそれぞれ別のお客さんが入っていた。
みんな、真剣に的を目がけてマイダーツを投げている。
先輩も、右手を目の近くに寄せ、狙いを定めてから、最後の一本を投げた。
それは空中でゆるい弧を描き、的のど真ん中へと突き刺さった。

