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「おめー歩くの遅せーよ」
今日は少し早めに家を出たためか、
先輩と顔を合わせたのは、学校近くの県道で信号待ちをしている時だった。
「……はようございます……」
「ああん? 聞こえねーよ。どうした汚物……じゃなくてオブチさん」
「べ、別に何もないっす」
目の前の県道には、左右にびゅんびゅんと車が行き交っている。
あたしは、横にいるそのイケメンの姿をチラ見した。
近くにあたししかいないためか、超大きな口をあけてあくびをしている。
先輩の長めの前髪と制服が、流れる車からの風にそよそよとなびいていた。
『もー、オブチのやつ、まじ使えねー!』
そうだ。
あたしなんか利用価値がなければすぐポイされる程度のしょぼーい存在なのだ。

