☆
『ごめんね。あたしまだノリ坊のことそこまでよく知らなくて。もし良かったら今度ゆっくり話しませんか?』
違う違う。これ、完全にデートに誘ってる流れじゃん!
急いであたしはスマホの文字を打ち消した。
『無理なら早めにはっきりフってください』
ノリ坊はあたしと吉野先輩が仲良しなこと、知っている。
あたしが先輩と祭デートに行ったことを知って、凹んでいたらしいし。
あたしはノリ坊に、付き合う気があるかどうか、その答えを伝えるべきなのだ。
彼のはにかんだ、可愛らしい笑顔が頭の中に浮かぶ。
もしもノリ坊があたしの彼氏だったら……(妄想スタート)
ノリ坊がストレートに気持ちを伝えてくれて、あたしはそれに照れながらテンパって。
きっと、あたしが変なことを口走ったとしても、ノリ坊は笑いながら受け入れてくれそう。
ベタベタな少女漫画を読んでいることがバレても、それ面白そうですねーって興味持ってくれたり。
ノリ坊の部活が終わるのを待っていると、すみません待たせましたよね、とか言ってダッシュで向かってきてくれたり。
――むふ、ふふふふふふふふ。
1人駅ビルのドトールでニヤけてしまうあたし。
はっと我にかえり、ため息を吐く。
ミーちゃんとヒロキ氏からの衝撃の告白もあり、今は頭の中を整理しようと1人カフェタイム中。
それにしても。ホント、この自分の無駄に優れた妄想力には驚かされるよ。
もうケータイ小説でも書き始めるか?
――だけど。
違うんだと思う。
本当にあたしが求めているものとは。

