彼氏は欲しい。欲しいと心の底から願っていたはずだけど。
いざ突然こんなことになるなんて思っていなかった。
モテないあたしは、この自分のモテなさに慣れすぎてしまっていたのかもしれない。
そしてモテない状況にどこか安心していたのかもしれない。
もしかして、あたし。恋に憧れていただけ?
「…………」
いつの間にか、教室にはほとんど生徒が残っていなくて、
あたしたち3人の間に沈黙が走ると、廊下の奥からのざわついた声しか聞こえなくなった。
沈黙を破ったのはミーちゃん。
ぼそっとこう言った。
「もっと早く相談してよ……もう。
じゃあ、吉野さんも、ノリ坊も今、生殺し状態ってこと? 何だか可愛そう」
「ええ?」
「お前、結局誰も選ばないで、このままずっとモテない彼氏欲しいとか言ってそうー」
ヒロキ氏も伸びをしながら、そうつぶやいた。
「だって、分かんないんだもん。信じられなくて。
これってやっぱりめちゃイケやロンハーレベルの壮大なドッキリだったりする!?」
椅子から立ち上がり、2人を交互に見つめても、その表情は変わらない。
再び、しーんと気まずい空気に包まれる。
「じょ、冗談ですって」とあたしは言うことしかできなかった。

