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あの日以来、朝も放課後も、いつもの道で吉野先輩の姿を見かけることはなかった。
先輩はやっぱり通常イケメンモードにしっかり戻ったらしい。
あの日――みんなに凹んだ姿を見せた日は、
単に体調が悪かっただけ、と先輩がみんなに笑いながら釈明したとのこと。
そして、あたしとのことは、
『ほら、色々なタイプの女の子と仲良くなる方が、俺のキャパが広がるっていうか、自分高められそうかなーって思って近づいてみた』
『さすが吉野クン、意識高~い!』
とのこと。そ、そうですか……。
でも、これが先輩の本音なのかもわからない。
普段は多種多様な美女がまとわりついているし。
やっぱり先輩と仲良くできていたことは夢だったのかな……。
あたしはずっと頭の中がごちゃごちゃしていて、
どうしたらいいのかが全然分からなくなってしまっていた。
「オブちゃん、顔色悪くない? 大丈夫……?」
「あ、ごめん。ちょっと寝不足で」
放課後。あたしはミーちゃんに心配そうな顔を向けられていた。
「今、色々大変っぽいもんね~。噂でしか知らないけど」
「う……」
「オブちゃんから言ってくれると思ってたけど、全然教えてくれないんだもん」
「ご、ごめん……ほら。何かまだ色々はっきりしてなくて、そんな状態で相談しても悪いし……って、あれ?」
そうあたしが言っている間に、ミーちゃんは別の席にいるヒロキ氏を呼びに行っていた。
あ、もしかしてヒロキ氏、ノリ坊から何か聞いてるかな……?

