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一学期ラストの委員会活動は、特別教室の大掃除。
あたしは1階の被服室の担当になり、マイペット片手に窓ガラスを拭いていた。
同じ室内には、数人の委員会メンバーの他、吉野先輩もいる。
「まじ暑いーだるいー」
と文句を言っている女子たちに対して、
「まーまー。ささっとやって早く終わらせようよ」
と先輩は笑顔で促しながら、作業に取り掛かっていた。
そのイケメンっぷりに、女子たちは目をキラキラさせながら「はいっ!」とテンション高く返事をしていた。
――あれ? 吉野先輩……キャラ戻ってる?
何となく気まずいあたしは、みんなの輪から離れ、1人で教室前方の窓を拭いていた。
上の段の窓を拭こうと思い、上履きを脱ぎ、椅子の上にのぼる。
しかし、あたしの身長じゃ窓の角まで届かない。
「とりゃー」
椅子の上につま先立ちをして、びよーんと手を伸ばす。
しかし勢いあまってしまい、バランスをくずしてしまう。
がたん、と足元の椅子が揺れた。
ここで踏ん張れば転びはしないだろうと思い、つま先に力を入れたが、
つるっ!!
と椅子の上で足を滑らせてしまった。
「ぎゃっ!」
目に映る全てのものが、急スピードで線を描くようにぼやけていく。
やばっ、こりゃ床に一直線か!?
伸びきった体のまま、全身打撲を覚悟して目をつぶった、と同時に。
「オブチさん!」
あわただしい足音とともに、聞こえたのは……
あれ? 吉野先輩の声――!?

