あたしが黙ってしまうと、
「あはははー! もう吉野クンもモモカちゃんもマジでおもしろすぎー!」
というスミスさんのちゃらい笑い声が廊下に響いた。
わ、笑いごとじゃないですよ……あたしも必死なんですけど……!
しゅんと下を向こうとしたが、
「モモカちゃん、幸せは逃さないようにしなきゃだめだよ~」
と、スミスさんは優しく言って、ぽんとあたしの頭に手を置いた。
びっくりして目を見開いてしまうあたし。
対して、スミスさんはあたしを優しく見守るかのような、やわらかい笑顔になっていた。
「実はね、オレ、元カノが来年日本に帰ってくることになってさー」
「え、そうなんですか?」
「女の子と遊ぶのやめて、また追いかけようかな~って。向こうは彼氏できたかもしれないし、どう思ってるか分かんないけど」
そう語るスミスさんが、いつも以上にまぶしく見えた。
でも。幸せは逃さないように、って言われても……
どうしたらいいか全然分かんないよぉぉお!
いやいやいや、頭では分かっている。
分かってはいるけど。
誰かを傷つけるくらいだったら、自分の幸せなんかもう、
どうでもいいのかもしれない。

