夏休みまであと少し。
先生方は1学期の範囲を終わらせようと頑張っているようで、
あわただしく次々と科目を変えながら授業は進んでいく。
席に座っているあたしだけが止まっていて、
クラスメイトや先生、黒板やみんなの机の上など、まわりの景色だけがせわしなく動いているかのように思えた。
そんな中、ある噂があたしの耳に入ってきた。
「ちょっと、吉野先輩が変らしいよ!」
「まじ? 体調とか悪いんじゃないの?」
「いやいや、普通に話とかはするんだけど、何か魂抜けてる感じっていうか……」
「あたし、あいさつしても無視されたんだけど!」
「うっそー。そんなの吉野先輩じゃないって! 双子の弟か、そっくりさんか、宇宙人か何かと入れ換わってるんじゃね?」
あたしはさーっと血の気が引いていくことを感じた。
――いや、たぶん、それ、ちゃんと本人です。

