「あの返事はいつでもいいんで……」


「……うん。また連絡するね」



ノリ坊のこと、先輩のこと。


ちゃんと考えて、まずは自分の気持ちを整理させよう。



そう思いながら、ノリ坊と一緒に校舎方面へ向かった。



「じゃ、またね」



「…………さっきの嘘です」



「え?」



『嘘です』って。さっきの告白のこと?



もしや、テッテレー! ドッキリ大成功ー! 的な?


なんてことが一瞬、頭をよぎったけど。



ノリ坊は下を向いたまま、あたしの腕をぎゅっとつかみ、


「すみません、もう……望みのない恋するのつらい」


と消えそうな声でつぶやいた。



「え………」



「無理なら、早めにはっきりフってください」



そう言って、彼はあたしの肩に額を乗せる。



ちょうど雲の隙間から太陽が顔を出したようで、


不安定なあたしの気持ちが、結論を何も出せないままに、


ただじりじりと熱されていくかのようだった。



「…………」



「ってわーーー! 俺……ダサッ。何でもないっす、今の忘れてください。じゃ!」


 
顔を真っ赤にしながら、ノリ坊はパッとあたしから離れ、


自転車置き場へダッシュしていってしまった。