石畳の上であたしは足を止めた。
急に立ち止まったからか、とんっ、とあたしに先輩の肩がぶつかった。
触れた部分に神経が集中してしまう。
この前たくさんの人と出店でにぎわっていたこの道は、今、
犬の散歩をしている人や近所の小学生たちがぽつぽつとといて、
道のまわりに木々と住宅街が広がっているだけ。
緑色の葉っぱの奥には夏の空が広がっている。
瞳に映る景色は、すっかり日常に戻っていた。
ちらっと先輩を見上げると、彼もまたあたしに顔を向ける。
「…………」
その距離は、20センチくらい。
斜めに流した前髪がさらっと風に吹かれ、
彼の二重の目をあらわにした。
う……。
先輩に見つめられると、体が石になったかのように全く動かない。
(やっぱり先輩の正体はメデューサ!?)
「どーした。帰んねーの?」
すっと視線をそらし、あたしを追い越して進もうとする先輩。
「……先輩」
もやもやした気持ちが渦を巻いてしまい、
脳みそを通さずに体が動いてしまう。
あたしは先輩の白シャツの背中のあたりをつかんでいた。
「ん?」
「むかつく」
あたしのつぶやきに彼は振り返り、
「は?」と眉間にしわを寄せた。
――やばっ!

