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「だから大丈夫ですってばー!」
「あほか。足引きずりまくってたのは誰だよ。暴れると浴衣着崩れるぞー」
家まであと5分くらいなのに、急に足の痛みがひどくなってしまった。
結局、先輩がおぶってくれることに。
人通りが少なくなった薄暗い道を、彼はあたしを乗せてずんずんと進む。
「すみません! 重いですよね。しんどかったら落としていいんで!」
ってかこれやばい。鼓動もやばい。
完全に後ろから抱きついてる体勢じゃん、これ!
しかも超密着してるし!!!
やっぱり先輩、細いんだけど腕とか肩とかにちゃんと筋肉はついている感じがする。やばい鼻血でそう……。
「あのさ、俺も一応成長期終えかけの男子なんだけど」
「あたしはまだダイエット終わってないですから! 本当すみませんー!」
「前に保健室運んだ時も思ったけど、別に重くねーし。となりで足引きずられてる方が気まずいわ」
「う、でも……」
「あー! さっきからピーピーうるせーな。黙んねーとキスするぞ、コラ」
「……ひっ!?」
き、キキキキキス?!!?
何ともあたしの人生とは縁遠い言葉!
思わず、息を止める勢いで口を閉じた。
からん、からん、と先輩の下駄の音が、遠くからの祭の音に混ざって聞こえてくる。
その音に合わせて、体が上下に軽く揺れる。
先輩、あったかいなぁ……。
触れ合った部分から先輩の体温を感じて安心するとともに、
この背中にもっとくっついていたいという思いが生じてしまう。
いやいや、あたし重いだろうし、
早く解放してあげなきゃなんだけど。

