「や、そ、そそそーいうわけじゃ!」
先輩、細いけどちゃんと筋肉付いてていい体してるよな……
なんてことを一瞬考えてしまい、顔がボッと真っ赤になってしまう。
ぎゃー変態かあたしはーーー!
「でも、すげー人。はぐれそーだなー」
先輩は冷静にあたりを見回してから、ぐっとあたしの手を握った。
どきーん!?
「……っ、その、あのぅ」
「お前迷子になったら1人で家帰りそうだし」
ちょっ、ちょっと、
ちょっとちょっと!!!!
先輩はあたしの手を引っ張りながら、人ごみをずんずん進んでいく。
「あ、吉野さんだー! カッコいい~!」
「わー浴衣超似合ってるし! ……ってあの後ろにいる女子、何?」
時々、同じ高校らしき人がいて、そんな声も聞こえてきた。
でも、心臓が超ばくばく鳴っているあたしは、そんなのを気にする余裕がなかった。
じわりじわりと。
握られたその手から、温もりが伝わってくる。
何度か、知らない肩とぶつかりそうになったけど。
その度に先輩はチラッとあたしを見てくれて、
ぐいっと彼のすぐ後ろに引きよせてくれた。
単にはぐれないように、引っ張ってくれてるだけ。
それだけのはずなのに、とても嬉しくて。
子どもから中高生、大人まで、たくさんの種類の人がいりまじっているのに、
あたしと先輩が2人きりになっているような、不思議な感覚になっていた。

