浴衣ちゃんと着れてるかな。
髪の毛くずれてないよね。
あまり知ってる人に会わないようにしないと。
待ち合わせより早い時間に到着してしまい、あたしは人でどんどん埋まっていく景色の中でそわそわしていた。
しかし――
「うっ!!」
突然、足の甲に重い何かがのしかかる。
そこから体中を駆け巡ったのは、
刺さるような鋭い痛み。
「あ、ごめぇ~ん? ぶつかっちゃったー!」
「って、うわー最悪ー。何で休みの日まで汚ねーやつ視界に入れなきゃなんねーの?」
顔を上げると、
キラキラと派手な服&メイクの女子2人が目の前にいた。
――最悪。
この子たち、あの悪のミーハー女子軍団のメンバーじゃん。
もうあたしへの嫌がらせはおさまったと思ったのに。
下駄を履いているあたし。
その女子のミュールのヒール攻撃を直接受けてしまい、痛みが中々回復しない。
「うわーおめー浴衣全然似合ってねーじゃん」
「ほんとキンモー。調子に乗んなよぶすぶすぶーす!」
「……痛っ!」
大声の罵倒を浴びるとともに、再び細いヒールがあたしの足を襲った。
何してるんだろう、あたし。
こんなんだったら浴衣とか着なきゃよかった。
いつもは下ろしっぱなしの髪の毛も今日は編み込んで頭の上でまとめて。
気合い入れたところで、あたしなんか単なるブスクズのままなのに。
足だけじゃなく、心の中にも痛みがもやもやと広がっていった、
その時――。
「ねー何してんの?」
楽しそうな声がこだましているこの空間に、ドスのきいたイケメンボイスが聞こえた。
あ、吉野先輩……。
って、きゃーーーーー!?!?

