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今年の祭はテスト期間とかぶったこともあり、電車通学の子たちはあまり来ないようだ。
市全体の秋祭よりも規模は小さいし、来るのは地元の人ばっかりのはず。
でも、石畳の道には出店がずらっと並び、近所の人たちによるお神輿も盛り上がるし、
初詣の次にあの神社がにぎわう日ではある。
出店の明かりと、花飾りと提灯で彩られた景色はとても綺麗だった。
「オブちゃん久しぶりー! わー浴衣だぁ。珍しい!」
「あ、あははー。あたしがこんな格好なんかして似合わないよね?」
「ううん。超かわいーんだけど! 誰かと待ち合わせ?」
「ま、ま、まあ、その。こ、高校の友達と約束してて」
同中だった地元の友達に声をかけられ、テンパってしまうあたし。
いやいや、浴衣=可愛いは社交辞令だよね。うん。
人ごみの中、ところどころに水色やピンクなど、鮮やかな浴衣を着た女の子たちの姿が見える。
ピンクのが欲しかったけどキャラじゃないから、あたしは紺色に撫子の花がちりばめられたものにした。
浴衣でこの祭に行くのは小学生以来。
中学の頃は、部活の友達やクラスメイトがここで浴衣デートしてたけど。
そういうのに無縁だったあたしは、ジャージで部活帰りに友達と遊びに行く程度だった。

