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近所の住宅街や石畳の道には、
ところどころに花の飾りがつるされている。
それは梅雨晴れのまぶしい太陽によってキラキラと光を発していた。
あたしは1人、石段の一番下の段に腰をかけていた。
――キーンコーンカーンコーン。
彼があたしの前に現れたのは、予鈴チャイムが聞こえてきた頃。
いつもの爽やかな香りがふわりとあたしを包む。
「お前何してんの? 遅刻すんぞ」
その声の方向を見上げると、
温い風に茶髪をなびかせて、怪訝そうな顔を向ける吉野先輩がいた。
「先輩のこと待ってました」
「は?」
「昨日の夜はちゃんと眠れました?」
「…………」
「1人反省会したんじゃないですか?」
心配そうな声を出すと、石段に映された先輩の影がぴくっと動いた。
「るせーな。お前は俺の何なの? おかんか?」
風が吹くごとに、しゃらり、しゃらり、と花の飾りがこすれ合う音が聞こえてくる。
「……友達ですが、何か?」
あたしが座ったまま、先輩を見上げてそう言うと、
「あーーーもう!」
と彼は言って、せっかくセットしただろう茶髪をぐしゃっとしながら、その場に屈みこんだ。
びくっと体が震えたが、あたしは先輩の動きを目で追い続けた。

