ん……待てよ?
「ヒロキ氏、中学の頃、彼女いたじゃん。しかも可愛い子」
「あ、そーだった。しょーがないじゃん。
例えば、バーベキューかなんかの網の上で、はまぐりが開くのをじっと待つよりも、近くでお肉がジュージュー焼けてたらソッコーでそっち食べるっしょ普通。男子中学生なんてさ」
「え、どういうこと?」
「お前が、恋愛とか全然興味なさそうだったってこと」
「えー!? あったよ! 超あったのに!」
「あ、でもゴメンね。今はもう別で好きなヤツいるから」
カクッとあたしはずっこけそうになると同時に、ミーちゃんが席に戻ってきた。
あたしは、ジュージューと焼けたお肉ではなくて、固く口を閉ざしたはまぐり。
要は、まだ食べられる段階になっていなかったってことか。
別に、殻を閉ざしていたわけじゃないのになぁ。
確かに合コン的なことの誘いに乗ったことはないし、紹介するよって言われても断ってきた。
彼氏は欲しかったけど、でも。
『男を作るぞー!』って気合入れて彼氏作ったとしても、お互いの人間性が合わなかったらどうすんの? って思うし。
1人でもんもんとしていると――
「ねーもしかしてオブちゃん好きな人でもできたの?」
「ぶはっ!!」
突然のミーちゃんの問いかけに、再びお茶を吹いてしまった。
「だってメイクにも目覚めたし、髪型もちょっと変えたでしょ? 可愛くなったよー。
もしかして……吉野さんとか?」
「違う違う! あんなイケメンな人、あたしなんかじゃ無理だし! ほら、あたしもそろそろいい年だし、ちゃんと見た目も良くしなきゃってことで!」
もう! 何これ! 鼻の下に汗かいちゃいそう!

