とりあえず速く仕事を終わらせたかったため、
「すみませんー。そこだけまだ汚いので早くキレイにしてもらえませんかー?」
と言いながら、あたしは手にしたホースを先輩+女子2名の足元に向けた。
水が3人の足元に向かって勢いよく噴き出す。
すると、キャー冷たーい、今やろうとしてたのにー、と女子2名はぶーぶーとあたしに文句を言う。
「ほら、雨降りそうだし早く終わらせよー」
先輩がブラシで床をこすり始めると、その女子2名もしぶしぶ手を動かす。
先輩ナイス! これで無事に終わりになりそうだ。
だがしかし。
「あーオブチさん、あそこにも水まいてくださーい」とさっきの女子1が話しかけてきた。
「このあたりも水足りませんー」と女子2が。
「オブチさん。こっちこっち!」と再び女子1が。
女子2名は少しずつ場所を移動しながら、あたしをプールの端へと誘導していく。
う、こいつら上手くあたしを先輩から遠ざけようとしているな。
そう思いつつ、早く終わらせたいあたしは、
その声の方向に足を進めたが――。
コンッ! と突然、右すねに固いものが当たる。
「ぎゃっ!」
泣き所を攻撃され、痛みが全身に伝わっていく。
と同時に……。
つるっ!!
「ひっ!」
あれ……? 体が浮かんだ!?
あたしは、右すねをデッキブラシの柄で払われ、その勢いで体のバランスをくずしたようだ。
そして――
びっちゃーん!!!
「うぅ……」
「キャーオブチさん大丈夫ぅー?」
「滑りやすいから気をつけなよぉー」
あたしは女子2名のわざとらしい悲鳴を聞きながら、
プール床に薄く溜まっている水の冷たさを全身で感じていた。
――ち、ちくしょう! ひっかかった!

