きっと、さっきの漫画にもあった、
『黙って俺に守られてればいいんだよ!』っていうセリフを言いたかったんだろうな。
せっかくのキュンポイント激高の言葉、噛んじゃって。プ。
「あはは、ありがとうございます。そう言ってくれるだけで、もう大丈夫ですよ」
あたしは先輩に弱々しく笑顔を返しておいた。
気持ちは嬉しい。ちょっと元気も出た。
でも、先輩には余計な心配かけたくないんだよな。
俺のせいでこんなことに……って悩んじゃいそうだし。
ま、別にあたしは先輩に色目使ってるわけじゃないから、きっとそのうち女子軍団も落ち着いてくれるだろう。
あたしはそうタカをくくっていた。
☆
その日は、朝自習の当番が回ってきたため、早めに家を出た。
少し湿った風を感じながら、もうすぐ梅雨がきちゃうのかな~と物思いにふけりつつ、校舎へ向かう。
「オブちゃんおはよー! 珍しいねこの時間に来るの」
「今日朝自習当番でさー」
「ははは! そうでもないと、絶対オブちゃん遅刻ギリだしねー。じゃ、先教室行ってるね!」
下駄箱にて、クラスで仲の良い女子グループと会話を交わす。
あたしは職員室に寄らなければいけないため、彼女たちとそこで別れた。
なんてことのない、いつもの朝だった。
そう。ここまでは。
あたしは上履きを取り出し、パンッと床に落とす。
いつも通り、
何気なくそこに足を入れた、瞬間――。
――べちょっ!!
え? べちょ!?

