何と、先輩があたしの頭をぐっと自分の肩に寄せたのだ。
「ふが、ふががが(ちょっ、先輩……っ)⁉︎」
「うるせー。睡眠の邪魔」
小声でつぶやくその音に合わせて、密着している体が振動する。
制服のシャツ越しに先輩の体温を感じた。
何これ……。
やばいやばいやばいやばいやばい!
『お前は黙って俺に抱かれてればいいんだよ』
さっき先輩が囁いた漫画のセリフが、頭の中でぐるぐると暴れまわる。
どくんどきどきどっどっどっどどどどど!!!
バグった時のゲームのBGM並みに心臓がドキドキしてしまう。
鼓動が体を通じて先輩に伝わっちゃうかも!
――でも。待てよ。
こういう時って男の子の方もドキッとしてるのだろうか。
少女漫画だと、ラブシーンで男の子側の頬にも斜め線が何本も入ってること多い気がする。
あたしばっかりこんなに心臓がドンドコいってるのって、何かずるくね?
先輩は力が抜けたように、あたしの頭から背中に手を滑らせていた。
たぶん再び睡眠に入ろうとしているんだろう。
よし、今の隙に!
あたしはもぞもぞと先輩の肩から胸の辺りに移動する。
そして、左胸にぴたりとくっつき、聞き耳を立てた。

