ホルガリズム

「ところでサエちゃんはさ、彼女とか居ないの?」


トロトロの卵焼きを美味しそうに頬張っている彼女を見ていたら、危うく聞き流すところだった。


「サエちゃんって誰?」


「佐伯のサエちゃん。」


2本の箸の先が、僕の鼻の先にピタリと並んだ。


「……その呼び名だけは勘弁してくれ。」



「えーなんで?」


むぅっと頬を膨らませた彼女は、ジョッキに唇をつけたまま言った。


「サエちゃんが可愛いのになぁ。」




出来る事なら、そんな目で見るのも勘弁して欲しいと思う。


贅沢は言えないけれど。