ホルガリズム

「あーはいはい、あの時ね。」


ライターを手の平で遊ばせながら、彼女は続ける。


「あたし動物アレルギーなんだよね。」


「動物アレルギー?」


「うん、しっぽアレルギー。」


言いながら皿に手を伸ばした彼女は、さっきまであったハズの枝豆がなくなっている事に気付き、アレ?っと言いたげな顔をした。僕はそれを気付かないフリをして続ける。


「アレルギーなのにわざわざ牛乳を?」


彼女はまだ名残惜しそうに、空っぽの皿を見つめている。


「んーまぁね。しっぽチビだし、あたしもヒマだったし。うわっ、美味しそう。」


タイミングよく届いた卵焼きを前にして、彼女は早くも目を輝かせながら嬉しそうに箸を割っていた。



その目が少しだけしっぽに似ていたから、仕方なく今日だけは卵焼きを我慢する事にした。