ホルガリズム

「平田さん、風邪治ったの?」


「へ?」


「いや屁じゃなくて。」



彼女が真顔になると同時に僕の左わき腹にはくすぐったい衝撃が走り、思わず上半身が“く”の字になった。


「ちょ、わき腹はやめ・・・っ。」


「うるさい。」


またしても衝撃が走り、僕は思わず椅子から離れた。


「もう、ばぁか。」


わき腹を押さえながら抗議すると、彼女はケラケラと暢気に笑った。軽く溜め息をついて、僕は椅子に座り直す。


「この間ベンチで鼻かんでただろ。風邪引いてたんじゃないの?」


皿に手を伸ばすと、枝豆はすっかり減っていた。