『……司ッ…!!』
麻里の言葉に、俺は麻里の指先に視線を向ける。
『……え……』
その視線の先には浩二とアイツが手を取り合う、まさにその瞬間…
そして俺の前で触れ合った手。
俺は足が止まった。
『…司……』
俺が見たかった、その笑顔で、浩二を見つめるアイツ。
そんなアイツに優しい笑みを見せる浩二の姿…。
……気づくのが遅かった、そういうこと…かよ…?
あんなに優しく笑い合う、その二人は遠くから見ても、そういうことになった、そうにしか見えなかった…。
俺はその場に座り込んだ。
あんなに走り回ったんだ、そりゃ…疲れるわ…。
でも、あんなに息をきらしても走り続けた、その意味は音もなく俺の中で崩れ落ちていく。
『…司…』
『麻里…もう俺、いいや…』
『司、何言ってんの…?』
麻里は俺と同じように、その場に膝まづく。
『…もう、結果でてんのに…意味ないじゃん…』
俺は一番弱音を吐いてはいけない、その相手に向かってそう言った。
『司、あんた、なんであんなに走ったの!?』
『息きらして、足がつりそうになっても、それでも走り続けたのはなんで?』
麻里は俺にいくつもの言葉を投げかけてくる。
『あんたが走り続けたのは、浩二くんと芽衣のあの絵を見るため?
あんたが走り続けてきたのは、自分の気持ちを伝えるためなんじゃないの…!?』
麻里の言葉に顔をあげる。
『…麻里…なんでこんなダサい男にそんな風に言ってくれんの…?』
『バカね、あんたのことを想ってるからだよ…?
だから、あんたが心から想える相手と幸せになって欲しいからだよ…』
麻里はそう言って、困ったように笑った。
『俺、なんで麻里のことを好きにならなかったんだろうな…』
もし麻里のこんな良さを見抜けていたら…
麻里を好きになれていたら、そうしたら俺はすっごく幸せになれてた、と、思う。
でも、なんでかな…
なんで、俺の心にいるのは、
こんな状態でも、アイツ…なんだろう…。