『麻里……俺……』




麻里は俺から離れ、そして微笑んだ。



『良かった、司が気付いてくれて』




『…麻里…?』



『きっと、司と最後までしてたら、あたし司を嫌いになってたよ…?』


麻里はそう言って、一筋の涙を流した。




『…麻里…?』



『司、届かない想いは苦しいんだよ?
 叶わない恋をすることは辛いんだよ?
 司と一度でも体の関係になったら、あたし…きっとやめられなかった。
 苦しくても…辛くても…きっと司のことが好きで好きでどうしようもなくて…』



『でも、司がこんなに鈍感で、バカな男だとは思わなかった…。
 あたしが好きになった司はそんな男じゃないから。
 だから、司の心の中にいる女に譲ってあげる』


麻里はそう言って、笑った。



きっと、本気で麻里は俺に恋をしてくれていたんだと思う。




だから、俺に大切なことを気付かせるために、きっとここに連れてきて。



そして大事なことを教えてくれたんだと思う。







『麻里、ありがとう…マジで』



俺は麻里にお礼を言った。


きっと、言っても言っても足りないくらい、麻里には感謝しなきゃいけない…。



でも、きっと、これ以上お礼を言われたら、麻里の我慢してる涙が溢れるから。


一生懸命我慢している、その涙が溢れ出すから。





『司、戻りなよ?』


麻里のその言葉に俺は頷く。




『きっと、司の心の中にいる人も、司を待ってるから』




アイツは俺を待たない…


待ってなんかない…




でも、俺は急いで服を着た。




『…麻里は…?』


俺がそう言うと、麻里は散らばった服を集め、着替え始めた。



『戻るわよ、夢の国に。
 そんで司たちが上手くいくのを見届けてやるから!』

麻里はそう答えて、俺たちは身支度を済ませ、部屋を出た。