『雪奈ー次の講義、遅れるよー』


雪奈の友達が何人かで、手を振っている。



『行かなきゃ』

雪奈はそう言って、その場にかがんで、最後のアイツの持ち物を拾った。



『はい』

雪奈はそう言って、アイツに拾ったものを手渡した。



『じゃーね、司。
 今度は邪魔されないところでね』

雪奈はそう言うなり、小走りで友達のところに寄っていく。


取り残された俺と、あの女…



『覗き見は趣味悪いって言ったばっかだろ?』


俺がそう言うと、彼女は何も答えずに、俺の横を通り過ぎようとした。




『なんで、何も言わないの?』


俺の言葉に、彼女はその場で立ち止まった。



『……あなたとは…話したくないから…』



俺と話したくない。


ですよね、俺と話したくないんだ。




『俺、あんたに嫌われるようなこと、したっけ?』



『………嫌いです…最初かから今も、だいっきらいです!』



何かが俺の中でプツリと切れる音がした。




『俺もお前みたいな女、大嫌いだよ!』


そう言って、彼女の手を引く。

その拍子に拾ったばかりの教科書とかが地面に落ちる。



『…離し』


彼女がそう叫んだとき、俺は彼女の唇を強引に奪う。

空いてる方の手で俺を押しのけようとするも、俺は彼女のもう片方の手を掴み、それを制止した。




…分からない。

関わりたくない。


なのに、俺は何度も口角を変えて、強引に彼女とキスをする。




『お前みたいな女、壊れればいいんだよ…!』


俺は彼女を木に押し付け、彼女を離さまいと何度もキスをする。



さっきの雪奈とは違う唇の感触に、吐息。

甘いムードなんてどこにもないのに、それでも俺は狂ったように彼女とキスをする。




何度目のキスだっただろうか…


ふとキスの最中に目を開けると、彼女は涙を流していた。