俺は後を追わず、そのまま講義室に残った。
なんだっていうんだよ。
アイツも浩二も。
好き勝手なことばかり言って。
それを言われた俺がどんなに訳わからなくてイラついてること、それをもっと知れよ。
そしてそんな中で講義は終わり、俺も喫煙所に向かう。
『司ー』
でも、俺の足は止まった。
名を呼ばれ、このイライラした感情をぶつけるのに、もっともふさわしい相手が来たからだ。
『雪奈、ちょっと』
俺は雪奈の手を引き、講義室の裏手にある、あまり人気のない場所に雪奈を連れて行く。
『司?』
キョトンとした、雪奈の顔。
俺はその雪奈の唇に強引にキスをした。
『…え……司……?』
突然のキスに戸惑ってるのか、雪奈はキスとキスの間に声を漏らす。
『黙れよ』
俺の言葉に雪奈は素直に従い、俺のキスを堪能し始める。
『司…もっとして…?』
あんなに甘ったるしい声に嫌悪感しか抱いてなかったのに、それでも今は俺を欲情させてほしい。
『うるせぇよ、黙って口開けよ』
俺の言葉にキスがどんどん深いものに変わっていく。
『司…好き…好きよ…?』
俺を訳の分からない言葉から、訳の分からない気持ちから逃がして。
その声で、俺を何も考えられなくなるくらいに欲情させて。
…ーバサバサッ
何かが落ちる音がして、俺はその音に一瞬で日常に戻された。
雪奈と俺は抱き合ったまま、その音の正体に目をやる。
そこには司書の専門の教科書やノートたちだった。
俺はその持ち物だけで主が分かった。
『…覗き見?』
雪奈がいつだったか俺が彼女に言った言葉を言う。
言われた本人は急いで落ちた教科書やノートを拾い集めた。