相愛性理論





あ、そうだ。


諒にガトーショコラを届けに行か、


<キーンコーンカーンコーン……>


私はグッと顔を上げた。


授業が始まる五分前を告げるチャイムだった。


私は慌てて立ち上がると、スカートに付いた砂を払う。


「諒…」


教室へ帰ろうかと考えた私だったが、やっぱり中庭を覗いてから戻ろうと思って走りだした。


…当然、そこに諒はいなかった。


…約束すっぽかしちゃったな…。


…諒、怒ってるかな…。


…私から誘ったのにな…。