君と想い出をもう一度

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「うわぁ~!見て見てっラルム!」


屋根の上で歓声を上げるミュウとは反対に、ラルムは焦りで星どころではない。

「ミュウ落ちんじゃねぇぞ!!」

「落ちないよっ、ほら見てラルム!」

ラルムの忠告は全く無意味で、ミュウの耳には入るはずもなかった。

一息ついてミュウが手近な場所に座ると、ラルムも隣に腰を下ろす。


「…もうすぐで結婚なんだね私たち」

「そうだな」

「早かった、なぁ…」


やけにしんみりとした口調で話すミュウをラルムが横目で見た。


夜空が映った瞳にうっすらと水の膜がかかっている。

「私、ラルムと会えて良かったなぁ」

「泣くほどか?」

「泣くほどだよ」


ふふ、と笑う姿が儚げだ。

「会ったの七歳でさー…今から結婚なんか決められてるんだって思ってたんだけど…ラルムに会ったらそんな気持ちふっ飛んじゃったよ」


今よりミュウは髪が短く、ラルムは声が高く…幼かった二人。


蜂蜜色の髪に瑠璃の瞳を持った無邪気な少女と、こげ茶の髪に琥珀色の瞳を持った、どこか生意気な少年。

生まれた瞬間から結婚という重石を背負った二人だからこそ育んできた愛だ。


「結婚なんて無くても、私はラルムが好き」


「…俺もだよ」


「亭主関白にはならないでよねー」

「なるか。お前は俺の姫なんだから」

「うわ、くさいこと言うね」

「ミュウが言い出したんだろうが」

「そうだったね、王子様」

くすりとミュウが笑う。

つられてラルムも笑った。

「ずぅっと一緒にいようね。私、ラルムのこと来世でも追いかける。何があってもね、何度でもラルムを好きになる」


「…俺が俺じゃなくてもか?来世でもラルムっつう名前か分かんねぇぞ」


「分かるよ、ラルムって名前じゃなくてもラルムの魂を感じるんだよ」

「何だそれ」

「あはは……ラルムは、私が私じゃなくても好きでいてくれる?」


「好きだよ、ずっと」


真剣な瞳で見つめ合い、数秒してからミュウが吹き出した。