君と想い出をもう一度

◇。°◆・.◇°。◆.・◇。°◆・.◇°。◆

隣で同じように歩みを進めるラルムに、ミュウは絶大な信頼を抱いていた。

感覚としては初対面なはずなのに、心を許せる相手だと思った。
自分が記憶を失っているために初対面な訳だが──どこか安心するのだ、この青年といると。


───なんだかなぁ。道なんて分からないのに、全く不安じゃない。

パシャ、と水溜まりに足を踏み入れた。

「大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」

些細な動きにも気を配ってくれる。
──私は、何を忘れている?

人や私に関係する記憶。分かってる。

青い空。眩しいくらいの青。

早く私を取り戻さないと。早く、早く。

「──ミュウ」

ふいに身体が引き寄せられた。

「誰かいる。俺から離れるな」

耳元に吐息がかかる。こんな状況だというのに、至近距離に心臓が跳ねた。

シャキン、と軽い金属が擦れた音。
ラルムの剣だ。

彼の瞳に冷たい光が宿る。明るい琥珀だったはずの瞳が底知れぬ闇をたたえるように暗くなる。

「また会ったね、お二人さん?」

声だけで分かる、十六夜だ。
スタッカートの効いた着地音ともに姿を現した。

ラルムが人一人殺せそうな眼光を十六夜に放つ。

「お前が見張ってることくらい分かってんだよ」

会うなんて悠長なもんじゃねぇだろ、と吐き捨てる。

「あー怖い。それで王族なんだからこの国も捨てたもんじゃないよね」

かの十六夜は全く動じずに笑みを浮かべる。

「お姫様のためなら王族貴族の立ち居振舞いも捨てられるってとこかな。ま、そんなことはどうでもいい」

手早くやっつけて朧月夜を安心させてあげなくちゃね。

剣を握る手に力がこもる。