時は過ぎていく。


突然、景色が切り替わった。
ここは...どこかの森か。
木々が囁く、鳥のさえずりは聞こえない。

そうだ、雛菊...雛菊はどこにいるの。
私はここにいるわ。
だから、はやく帰りましょう。
あのあたたかい、大きな暖炉を、また、家族で囲んで。
美味しいシチューをお母様が作ってくれて。
嗚呼...なんて居心地が良いの。

『お姉さま、私はここです。』

雛菊なのね...嗚呼、私の可愛い大切な妹。
どうして川の向こう側にいるの?
ほら、はやく帰りましょう。

『...なりません。』

どうして?
あなたはこんな場所にいるべきでは無いはずでしょう?
私とはやく帰るのよ。

『出来ないんです、お姉さま。』

嗚呼、どうしてそんな顔をするの。
悲しそうにしないで。
私が、あなたを覆う悲しみを、全て背負うから。
だから、そんな顔をしないで。

『すみません、でも、私はもうお姉さまといることが出来ないのです。』

どうしてなの雛菊。
私が何かしてしまったのかしら。

『お姉さま、目をお覚ましください。』

どうして...?

『ここは、死後の世界なのです。』

嘘...。
じゃあ...雛菊が、そちら側にいるのは。

『そうです、私も、母上も、父上も、死にました。』

え...

『お姉さまはまだこちらに渡っていません、ですから、目を、お覚ましください...』

雛菊...?
私だけが生き延びてしまったのね。
そういうことなのね。
でも、私は、あなたや、お母様やお父様がいない生活なんて、生きていけません。
どうすれば良いのかさえ、良い案が浮かびません。

『生きて...生きて、お姉さま。どうか...。』