彼、織戸 凌駕は私、鏑木 甘那の幼なじみである。



そしてまさしく


この私の絶世の美貌に


見劣りしない美少年である。


イギリス人の祖父譲りの肌や瞳の色、


高い鼻、無駄な肉のない顔。


長めの綺麗な黒髪も似合っている。


それにあの鎖骨っ…!


「おい」

「何よぉ…!?」

「お前、また何かくだらん妄想してたんだろ。」

「はぁ…?何言ってんの…」

「あ?」

「凌駕が鎖骨見せるからいけないのよ!」


私は念入りにカールをかけた自慢の髪を

風になびかせて言い放った。



ものすごく冷たい風がふいたきがした。


もう冬かなぁ。


「はぁ…

鏑木家のお嬢さんは

通学路くらいおしとやかに登校できんのかねー…」

「私は充分おしとやかよ」

この男、まったく…

なんて失礼な事を言うのかしら。


感じてみなさいこの周囲からの視線を!!!

憧れと恐縮を含んだ視線が


まるで国の女王へ敬意を払うかの様に…

「い……

    おい!!!」

「何よ!」

「危ないっ…!!!!」


最後に感じたのは

めったに見ることのない凌駕の大きな衝撃を受けた様な表情。


そして周りの悲鳴。


パトカーと救急車のサイレンが鳴り響く交差点で


私の意識は途絶えた。