「それじゃああたし、もう行くね。
ありがとう、由香!」
「頑張ってね!優ちゃん」
由香と由香の妹と別れたあたしは、再び歩きだす。
向かう先は、あたしが初夜に恋した場所。
「初夜!」
「優子さん!」
あたしは黒田くんと言う呼び方から初夜に変わったけど。
初夜は相変わらず、あたしをさん付けで呼ぶ。
他人行儀な言い方かもしれないけど、さん付けであたしのこと呼ぶ初夜の方が、初夜らしいと思うから。
今はまだ、さん付けで良いかな。
いずれは、優子って呼び捨てにするつもりだから。
「行こうか!」
「はい」
あたしたちが向かう場所は、あたしの家。
お父さんもお母さんも仕事だから、家にいるのはあたしと初夜だけ。
「じゃ、行くよ?」
「はい!」
あたしたちは椅子を並べてピアノの前に座り、同時に弾きだした。


