ただただ無我夢中で階段を駆け下りていく。



“見たんだ。広瀬先輩がクラスの女子に冷たく当たってるところを。
それも、いじめに近いような”


ウソだ、ウソだ…

先輩がそんなことするわけない。


先輩がそんな事、加奈子さんにするはずないよ……!






後先考えずに外へと飛び出すと

校庭にはまだ広瀬先輩が。


とっさに先輩の元へ歩み寄ろうとしたところで、ふと冷静にかえる。



「……」



私、先輩に何を聞こうとしていたの……



先輩にとって私は

気の知れた先輩後輩の仲でも、知り合いでも何でもない。


ただの部外者なのに。





それを痛感したとき、足が動かせなくなって
傘も持たずに、ただその場に立ち尽くす。


……こんな時でさえ、先輩がこっちを見てくれることはなくて。



居たたまれなくなった私は思わずここから走り出すと、そのまま学校をあとにした。





「ただいま……」

「おかえり。…ってちょっと優衣!?どうしたのその格好!?」



案の定、全身びしょ濡れになって帰ってきた私に、親はびっくりしていた。


夜中、体温を測ると熱が38度以上もあり

翌日、私は学校を休んだ。