「こんな話、直接言うつもりなかった。けど先輩のことでそんなんなってる栗原見たら…」

「嘘だよ…」

「……」

「隼人ってば、何言ってんの…?
そんなの嘘だよ。先輩が加奈子さんにそんな事するわけないじゃん。絶対、隼人の見間違いか何かだよ」


だってあの日、あの時。


目も合わそうとせず足早に帰っていこうとする加奈子さんを見て

あんなに苦しそうな顔してた先輩が、そんな事するわけ…


「けど俺は見た」


隼人の強い口調に

先輩を信じようとする気持ちが揺らぎそうになる。


とっさに窓の方を振り向くと
雨の中、校庭には今もまだ広瀬先輩がいて…。



「……」

「おい、栗原!?」



それを見た私は止める隼人の手を振り切ると、急いで教室を飛び出した。