「…栗原。あのさ」

「?」

「栗原がさっき、いきなり泣いた理由ってもしかして…」

「……」

「わり…、やっぱいいわ」


何かを私に聞きかけて、
「じゃあな」と話を勝手に終わらせてしまうと、そのまま走って学校に戻って行った隼人。

そんな隼人をしばらく後ろから見つめながら、ふいに俯く。


「……」



“さっき栗原が泣いてた理由ってもしかして”



隼人はきっともう、気が付いてるんだと思う。

私が…広瀬先輩を想って泣いていたことを。


でもその事をあえて深く聞き出さないでいてくれたのは多分、隼人の優しさなのかな………。


「……」


再び顔を上げてみるものの、もうその先に隼人の姿は見えなくて。


そんな隼人に向かって謝るように、私はポツリとこう呟いた。


「ごめん、隼人……」