自宅のすぐ側まで来たところで、私は歩くのを止めて隼人に話しかける。


「私の家もうすぐそこだから。ここで良いよ」

「お、じゃあ……」


隼人の後ろでは今もスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている弟の優太。

そんな優太に私は手を伸ばし、隼人の背中から自分の腕にそっと抱き移す。


「部活がんばってね」

「おう、じゃあな」


弟を両腕に抱きながら、空いた手で隼人に小さく手を振る。

そんな私に笑い返した隼人が、背を向けて走り出そうとしたとき…


「あっ待って隼人!」


後ろからいきなり呼び止めてきた私に、隼人がびっくりしたように振り向く。


「今日は色々、ありがと」

「……」

「いきなり呼んでごめん。言いたかったのはそれだけ」


改めてお礼を口にする私に対して、
隼人はどこか困ったように首の後ろに手をやったかと思うと、ポツリと口を開いた。