TEARS【~君色涙~】

「!」

「なぁそれってつまり、優衣はまだ俺の事が好きってこと?」

「……」

「人がせっかく必死に理性で抑え込んでんのに…期待させること言うなよな」


へ?期待って…?

思わぬ言葉に、流れ出ていた私の涙もピタリと止まる。

気のせいか、隼人の顔は照れて赤くなっていた。


「…き、期待って…それは隼人の方でしょ。さんざん優しくしといて実は妹みたい?それこそ勝手じゃん!」

「え、あぁあれはまぁその…自分への言い訳っつーか…」

「はぁなにそれ?じゃあ私とヨリ戻す気ないって返事も嘘だったって事?」

「あぁそうだよ、うっそ~」

「~~~!」

「って、俺ら卒業式に何言い合ってんだろな…」


ふと我に戻ったように、隼人が困った顔を浮かべて笑う。

そして優しい眼差しで私を見つめてくれると、こう言ったんだ。


「あのさ優衣。今日誕生日だよな。15歳の誕生日おめでとう」

「!」

「プレゼントの代わりになるか分かんねーけど、受け取ってくれる?」


取れて開いた学ランの隙間へ手を差し入れると、中の左内ポケットからある物を取り出す。

そこで私に見せてきたのは、一個の黄色いボタン。


「!これ…」

「うん。俺の第2ボタン。後輩の女子に欲しがられたからここに隠しといたんだ。これだけは他にあげたい人がいるからって」

「……」

「今思うと、すげー自信過剰だけど…」


自分の言動を思い出してか、隼人が恥ずかしそうに呟く。

でも、そんな隼人の手のひらにはまだ小さなボタンが光っていて、私はそれを喜んで受け取ったんだ。


「嬉しい、ありがとう!高校に行ってもずっと大切にするね!」

「……」

「…隼人?」


隼人が取っておいてくれた第2ボタン。

小さくてもそこには中学三年間の思い出がたくさん詰まっていて、どのどんなプレゼントよりも嬉しい。


ひたすらニコニコと一人喜びを噛みしめていたら、ふと隼人の熱い視線を感じて顔をあげる。


そのままジッと見つめていると


隼人はほんの一瞬だけ躊躇した表情を見せながら

でも真っ直ぐ私の目を見つめ返してきたんだ。



「優衣、あのさ。俺とまた…やり直さね?」

「え?」

「って、言い方違うよな。
俺ともう一度、付き合って下さい」



そう言って、私に頭を下げてくれた隼人。


……先輩を想って溢していた涙は
いつしか隼人を想い流す涙へと変わっていって…



このとき。


私は二度と迷うことなく、こう答えていたんだ。




「………はい。こちらこそ」



桜が風に舞う3月。



この春


私は、隼人と―――………