「! 優衣……」

「……」


目が合ってすぐ、隼人がガタッと立ち上がる。

予期せぬ形で見つかってしまった事もあって、今どんな顔したら良いのか分からなかったけど

隼人はそんなの気にする様子もなく、すぐさま駆け寄ってきてくれた。


「なぁ優衣、松葉杖は?今日1日使ってたはずだろ?どっかに置いてきたんじゃ…」

「…もう、治ったよ」

「……」

「隼人のおかげで…」


意を決して、精一杯声を振りしぼる。

そしてゆっくりと隼人の顔を見上げた。


「あのね隼人。足治ったけど、やっぱりまたここで一緒に勉強してもいい?」

「……」

「それで、5時になったら……」



と、言葉を詰まらせる私の気持ちを汲んでくれたのか、隼人が代わりにこう言ってくれた。



「一緒に帰ろう」




このとき私が目にしたのは、今までと変わらない隼人の明るい笑顔。


そう、本当は私…これが見たかったんだ。




妹みたいな存在でもいい。

そしてもう一度また、彼女として見てもらえなくても……



隼人が今ここに存在して、笑っていてくれるなら




「うん、ありがと…隼人」




それだけで、いい……。